十戒の第一の戒めは、「あなたには、わたしをおいてほかに神があってはならない」と言っています。それは、ただ唯一の神のみを神とし、他のなにものも神としてはならないということです。「神とする」ということは、神を「畏れ、愛する」こと、そして、「あがめ、信頼し、祈り、感謝する」ということです。神以外の何ものにもそのようにしてはならないことです。ここには、まことの神を正しく礼拝することが求められています。わたしたちの心と生活の中心に神をお迎えすることでもあります。まことの神を神として礼拝し、神に仕える、そのような礼拝者として日々の生活が整えられて神に喜ばれる者とされるのです。わたくしたちは、この戒めに従って正しく神を礼拝して生きるように招かれているのです。
第一の戒めに先立って神は「わたしは主、あなたの神、あなたをエジプトの国、奴隷の家から導きだした神である」と言われています。ご自分がどのような神であり、何をなさったのかをここに明らかにされたのです。
モーセに導かれてエジプトを脱出したイスラエルの民は、さまざまな苦難を経験しながら、敵の手から逃れて約束の地カナンに向かう途上でモーセを通して与えられた十戒は、開放された歩みの道導となるものです。神はイスラエルの民に「わたしは主、あなたの神」あなたの救い手、あなたの慰め手、それはわたしであると宣言されたのです。選びの民イスラエルをエジプトの奴隷から解放されたこの神の愛が、後に独り子イエスを送られて、わたしたちの罪の奴隷から解放してくださったのです。
神は「あなたは、わたしをおいてほかに神があってはならない」と言われます。わたしたちはこの神に応答してこの方以外にわたしの神はおられないと告白するのです。
ハイデルベルグ信仰問答の問94で「第一戒で、主は何を求めておられますか」の問いに、こう答えています。
「わたしが自分の魂の救いと祝福とを失わないために、あらゆる偶像崇拝、魔術、迷信的な教え、諸聖人や他の被造物への呼びかけを避けて逃れるべきこと。」また「唯一のまことの神を正しく知り、この方にのみすべてのよきものを期待し、真心からこの方を愛し、畏れ敬うことです。すなわち、わたしが、ほんのわずかでも神の御旨に反して何かをするくらいならば、むしろすべての被造物の方を放棄するということです」
ここには第一の戒めの教えが語られています。偶像をまことの神の代わりとすることや、神と並べて信頼を置いて拝もうとする、あらゆる誤りを退けて、ただひたすら唯一の神に信頼し、この方を愛しその御心に正しく従って行く、それは神が創造されたものに、正しく関わりを持って生きようとすることでもあります。神にのみ依り頼んで、ただひたすら、神の名前を呼び続ける、それが新しくされた者の自然な姿なのです。それ以外に生きる道をもたないのです。それゆえに、与えられている救いと祝福を失わないように、わたしの祝福の中に立ち続けるように、そのように言われます。
この教えをわたしたちへの神の愛の言葉として受け止めるなら、わたしたちはこの戒を守らざるを得ないのではないでしょうか。( 牧師 丸田 久子)
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