第3回あいちホスピス研究会 公開講座 
  

                                 報告者 河野悠子

   2008年5月31日(土)13:30〜16:00

   名古屋市ウィルあいち   司会 聖霊病院 森川さん

演題 「生と死を見つめて共に生きる」

講師 沼野尚美氏  六甲病院緩和ケア病棟チャプレン・カウンセラー

  (略歴)1956年大阪市生まれ。武庫川女子大学薬学部卒業
神戸ルーテル神学校修士課程、米国ゴンザガ大学宗教部宗教部宣教コース、ケンシントン大学大学院行動科学研究科修士課程修了(心理学、カウンセリング専攻)。

病院薬剤師から病院チャプレンとカウンセラーに転向。淀川キリスト教病院チャプレンを経て、
現在は日本バプテスト病院カウンセラー、国保中央病院緩和ケアホーム兼任。京都ノートルダム女子大学非常勤講師。
著書「癒されたい」「共に生きる道」(佼成出版社)等。

「生と死を見つめて共に生きる」

高校時代、病院勤務の医療者になりたいと思い、薬学を学ぶ。患者さんと直接かかわる服薬指導をしていて、たまたま患者さんの心の痛み、「今朝も目が覚めて、今日も生きなくてはならない苦しみ」を漏れ聴くことになる。

「心に希望が無いならば、人は輝いて自分らしくなれない」ことを知り、淀川緩和ケア病棟の他、7ヶ所の病棟に行きながら、「人と人との関り方」「今をどう生きるか」「人の良き援助者に」を学ぶ。

末期がんの患者さん以外は入れない病棟。「まあお気の毒に・・・」と適当に哀れまれる。しかし、哀れか幸せか誰が決めるのか?どうなったら幸せで、どうなったら不幸せか? それは心の持ち方で決まる。本人が決めること。病気になったから見えてくるものもある。たとえ癌になっても、その心への少しの援助で、その人らしく輝いて生きる余地あり。人生の終りを(又は老いを)豊かにするものは何? 
答は
人間関係

@家族   家族のつながりを大事に(足元を固める)息子に会いたい.息子は来ないなぜ来ない?息子曰く「わざと来なかった。僕が必死に送ったメールに父さんは返事をくれなかった。僕は鬱になった。父さんは助けてくれなかった。」

A友達   ノーメイクで会える友達。同世代だけでは危うい。(入院してみたら隣の病室にいるかもしれない。)賢く20才年下をマークする。

Bお金の管理   告知されたとてはずれあり。家を処分していたら帰るところが無い。嫁に管理を任せない。そこそこのお金を持っていること。生きる気持ちを大切に。

旅立ちを難しくする人間関係   

傷つけた側は忘れていても、傷つけられた側は覚えている。腹が立つ。怒りを覚える。安らかな気持ちになれない。

付き合い方2つ
1)機嫌が悪い。はた迷惑。犠牲者が出る。援助者に向かない。
2)傷ついた者は傷つかなかった者のようには生きられないが、他の人の痛みがわかる。

本物が少ない世の中。大臣、医療者にして然り。本物は苦労している人、人柄どんな人生を送ってきたかによる。プロと本物は違う。
誰にも公平で、人を育てることが出来る人。怒りを知りながら、その怒りを優しさに代える人。人の心を癒すことが出来る、本物を一人一人が目指そう!

人と人との関わりの中で大切な心得3つ

1)にいて相手が心地いいかどうか。相手がその人らしくなれるような温かい存在感。(その反対は、その人が傍にいるだけでイヤ。見舞って欲しくない人)
なにもしゃべらなくても「一人ぼっちじゃないよ」と傍にいてもらうだけで心地いい人。
優しい顔の表情、身体全体の存在感。微笑をプレゼントできる人。
人と共に生きることが出来るボランティアさんを探すボランティアコーディネーターは難しい仕事。

2)くこと。Dr.フランクルはアウシュビッツの体験者でありオーストリアの精神科医。人の尊厳を極限まで無視された体験を分析。人間はどんなに苦しいことがあっても耐えて生きようとする。自分にしか背負えない人生の課題(十字架を)を自覚して、前向きに生きられる。聴いてくれる人の存在の大切さ。耳を傾けてくれて自分に語らせる人がいてこそ前向きに生きられる。「もっと生きたかったな〜」

3)言葉で伝えることの大切さ。人間のコミニュケーションは言葉20%、表情その他80%。日本人は言葉がなくても悟って欲しい、悟ってもらえると思いがち。しかし分かっていても伝える必要がある。しかも繰り返したびたび。

チャンスがあるのに、この期におよんでも会話しない日本人。
最も大切な言葉=愛を伝える言葉。愛されているか。生まれて良かったのか

幸せを確認する言葉。

最後の言葉の使い方=「愛してるよ!」
身内に気恥ずかしいかもしれないが
死んで行く人は、家族にとって自分が大切な人で、愛されていることを確認したい。心に届くことばを聞きたい。

「死を待つ人の家」のマザーテレサはポイントをおさえて人と関わる。
通り過ぎるのでなく、立ち止まる。相手のニーズに応える(スープ)。

五感を使う。手を握る。ベッドサイドに座って見つめる。共に生きる。
臭いを嗅ぎながら人生を感じる。(故郷の食べ物。母の味。子供の時に食べたもの。)

相手が必要とすることを前もって察す。(空気を読む)言わぬ先に動く。

かけた時間ではなく、余裕がありそうにみせる雰囲気。
いい緊張感をもって一瞬一瞬に集中力が必要。

最後まで大切なメッセージを伝え、命の価値に気づかせる。

「あなたは大切な人」「愛してるよ」「あなたは生まれて来てよかった」
「手厚く見守られて幸せだった。」「ありがとう」

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