プレゼント
プレゼント




「ねえねえ、知ってる、日野ちゃん?」
 昼休み、購買で出会った火原の言葉にきょとんとしていると、
「あれ、知らない?明日は柚木の誕生日なんだよ」
 と教えてくれた。
「ぜんぜん知りませんでした」
「あれ、そうなの?日野ちゃんって柚木と仲が良いから知ってるかと思ったんだけどな。
でさ、日野ちゃんは柚木に誕生日プレゼント用意したか聞きたかったんだけど、
知らなかったんじゃ用意してないよね」
 火原が気まずそうに頭をかいた。
「実はまだ用意してなくてさ。何を買おうか迷ってるから日野ちゃんに相談しようかと
思ったんだけど。ゴメン」
 遠くで火原を呼ぶ声がした。
「あ、それじゃあね!」
「はい。教えてくれてありがとうございました」


昼休み、午後の授業中、練習の合間にもいろいろと考えてみたが、 なかなかいいプレゼントが思い浮かばなかった。 「うーん、何がいいのかなぁ・・・」  実用的なものがいいだろうか? それとも飾っておけるようなものがいいだろうか? あれこれと考えてはいるのだが、なんだかしっくりくるものがない。 人気のある彼のことだ、どうせたくさんの女の子たちからプレゼントをもらうだろう。 それならいっそのことインパクトのあるものにしてしまおうか。 「・・・やめといたほうがいいだろうな」  あの「素顔」の柚木のことだ。絶対にバカにされる。  悩んでいるうちに駅前通りについた。  いくつものお店を覗いてみたがこれ、というものは見つからない。  もうプレゼントとして無難なハンカチあたりでも選んで終わりにしようかと思ったとき、 風がいい香りを運んできた。  疲れた心が安らぐような、やさしい香りだ。香りがするほうに行ってみると、 そこにあったのは茶葉を販売しているお店だった。 「こんにちは。お茶をどうぞ」  店員が出してくれたお茶はほのかに甘い。 「おいしいです」 「ありがとう。これはウチでもオススメなんですよ。他のにくらべて味がまろやかなんです。 これは香りもいいからアロマなんかにも使っていただけますよ」 「アロマですか?」 「そうです。茶香炉って知りませんか?」  思い出した。  いつだったか話したことがある。 一緒に買い物に行ったとき、雑貨屋に茶香炉が置いてあった。何かわからなかった香穂子に 名前と使い方を教えてくれたのはそう、柚木だ。 「知ってます。やったことはないんですけど」 「とても安らぎますよ。興味があったらぜひ試してみてください」  これはいいかもしれない。  3軒前に入ったお店に茶香炉が置いてあったはずだ。 「あの、このお茶をプレゼントにしたいんですけど」 「それじゃあこの透明のビンに入れましょうか?こうすると見た目も可愛くなりますし」 「はい、お願いします」  綺麗にラッピングしてくれたお茶を受け取り、別の店で茶香炉を買った。 「これでよし、と」  柚木は喜んでくれるだろうか。  渡したときの反応も楽しみだ。 「そうだ」  明日の朝1番最初に出会ったら、プレゼントを渡そう。  そしてこう言おう。
「梓馬先輩、お誕生日おめでとうございます」





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